取り組み

青果に引けととらない新鮮さ

冷凍野菜の原料加工(冷凍加工)にあたるのは、宮崎県南部に位置する綾町の(株)綾・野菜加工館です。設立されたのは06年。社長の税所(さいしょ)篤朗さんが「私が会長を務める共同組織、(有)丸忠園芸組合の組合員の安定した生活と地域の活性化、また安心と安全、さらにこだわりをもってプロがつくった農産物を消費者に産直という形で届けたい」という思いで経営に乗り出しました。
  冷凍野菜は加熱処理(ブランチング)の工程があり、ほとんどの冷凍加工施設は野菜を高温のお湯に通しますが、(株)綾・野菜加工館では素材の味を逃さないように蒸気で蒸す方法を採用しています。また、原料入荷から加工までの時間が短いため、新鮮さは青果に引けをとらないと言います。

 

 原料産地は生活クラブの基本方針に沿って宮崎県を中心に鹿児島県、熊本県などと、加工場からの距離はそれほど離れていません。実際、06週に取組む冷凍カラーピーマンの原料は綾町の隣町・西都市、07、09週の冷凍ごぼうは隣町の小林市、08週の冷凍きざみねぎは熊本県が産地というように、産地から加工施設までのフードマイレージは輸入農産物原料に較べ、圧倒的に小さなものになっています。
  もちろん原料野菜は国産100%でトレーサビリティも万全です。たとえば、ごぼうを生産する(有)丸忠園芸組合では、農家が使う肥料などの資材をすべて組合が支給するとともに、トレーサビリティなどに対応するための統一的管理を実施しています。税所社長はこう胸を張ります。「原料の生産だけではなく、冷凍加工の両方を管理していますので産地偽装が起きる余地はありません」

自給力の向上とトレーサビリティの確立

  ところで、冷凍野菜の産地偽装が社会問題化しましたが、その一方で根本的な問題は見過ごされてきました。その第一が低価格です。冷凍野菜は一般的に、農家の再生産を保障する価格に見合わない低価格での流通が求められます。このため、集荷や加工の過程で偽装をしてでも価格を第一に考えざるを得ないという構造になっています。
  第二は原料確保の困難さです。冷凍野菜の原料にはあらかじめ加工用に栽培されたものと、青果の規格外のものが使われます。しかし、基本的には価格の高い青果での出荷が優先されるために作柄によっては安定的な原料確保が困難になることがあります。また、中国など海外で残留農薬問題などが起きると一気に国内産の需要が高まります。しかし、国内産地の供給には限界があり、この構造が偽装の温床になっているとも指摘されています。事実、長崎のキャセイ食品の産地偽装では、「08年1月に起きた中国産冷凍ギョーザ事件で国産への需要が高まり、そのあおりを受けて国産原料が確保できなかったことも原因」との声が同業者から上がっています。
  そして第三が、国内農業者の減少と高齢化です。このため国内産地では労働力不足が深刻化しつつありますが、一方で、人件費の安い中国などに産地を求める動きが止まらないことです。これがさらに国内の生産基盤を弱体化させていくという悪循環に陥っているのです。そこで 生活クラブは、「自給力の向上とトレーサビリティの確立に向けて、冷凍野菜と消費材原料野菜生産に関する独自の方針を持つ必要があると判断しました」(生活クラブ連合会開発部・舘勝敏部長代行)。具体的な方針は以下の通りです。

  1. 冷凍野菜原料と加工食品野菜原料のトレーサビリティの確立を図ります。そのために、原料野菜を青果物の提携生産者の原料を基本として開発を進めます。
  2. 産地の作型や産地特性(気候風土、土壌環境、圃場立地条件等)にあった青果を原料とし、将来的に契約栽培(播種前契約)を目指します。
  3. 「冷凍野菜」は青果同様、原料の鮮度が品質を左右する事から、加工場周辺の圃場で収穫された原料を基本とします。
  4. リスク分散を考慮し凍菜工場を5ヶ所(九州2ヶ所、関東1ヶ所、北海道2ヶ所)を目安に配置します。